君が望む永遠

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 美少女ゲーと言うにはかなり重厚でシリアスなストーリーで、主人公以外のキャラクターのすべてのセリフにリアルボイスが付き、心情を表現するかのようにシーンに合った音楽および効果音の付いた画面効果とがマッチして、プレイしている時にまるで TVドラマを見ているかのような感覚を憶える18禁ゲームである。
 声優が当てているセリフも、例外なくすべてのキャラクターに於いて声優個人がキャラクターの個性的な人格をしっかりと把握・形成できており、このため、大部分が静止画でありながら、感情の込もったボイスがまるで静止画に動きを与えているようで、シーンの雰囲気が非常に高められている。
 画面は静止画が基本だけど、同じ静止画でも会話の途中で表情が微妙に変化したり、また、動きとしては雨が降ったり、走り出す時に画面が掠れる効果がついたり、画面がホワイトアウトしたりなど多彩なエフェクトがあるので、静止画であることを気にするどころか動いているという雰囲気すら感じることができる。
 またプレイ中に自動文字送り機能を使用することで、リアルボイスによるセリフをしゃべり終わったタイミングで自動的にゲームが進んでゆくので、プレイヤーキャラクターのセリフを読むために視線の移動が多少必要なものの、ホントにドラマを見ているような感じで手放しで鑑賞することができる。

 この作品は美少女ゲームが発展したのではなく、TVドラマが美少女ゲームの世界にやってきたと言った方が相応しいのではないかとすら思ってしまう。
 その理由は、選択肢の自由度はあまり高いとは感じられないのだが、その分しっかりとしたストーリーになっているため、選択肢の項目で迷うというよりも、ドラマとしてのストーリーを悩むという雰囲気だからだ。
 『TVドラマが美少女ゲームの形態を借りて、プレイヤーの選択によるストーリー分岐を行なえるようになった』といっても過言ではない程の、いや、言い方を変えるとプレイヤーの意志が反映されるために、TVドラマなどを遥かに越えた感情移入ができるのではないかと、そんな可能性すら見えてしまった。
 メーカーの作品紹介にも書かれていたが、ストーリー分岐の選択肢も、クイズに答えるような賭けではなく『誰を選ぶか』という方針で選択肢が用意されているため、より直接的にプレイヤーの意志が反映されやすくなっているのも感情移入しやすくなっている要因だと思う。

 作品の完成度が高いのも然る事ながら、ドラマとしての完成度も、非常に高い。

 しいて要望を挙げるならば、エンディングまで到達した分のゲームデータをセーブできるようにして、リプレイというか、自動プレイできるようにして、気に入ったストーリーをいつか忘れかけた時にもう一度楽しむことができたら良いと思う。
 ゲーム部分はもう十分楽しんだので、ストーリーだけを純粋に楽しめたらいいな、ということである。
 さらに、プレイヤーのセリフもしゃべってくれると、完全に TVドラマに退けを取らないアニメーションといっても遜色無いと思う。えっちシーンさえ全年齢向けに簡略化すれば TV放送されてもおかしくない。
 (某NTV系列でテスト放送時間帯に放送している、ゲームやCGを放送している中に入れるとかね。)

 難点も多少あって、インストールに約800MBものディスク容量を消費するため、環境的に用意することが困難な場合がある。ディスク容量さえ確保できればマシンは 6x86MX+RAM128MB+GeForce2MX/PCIでも良く、画面の切り替えはやはり遅いけどゲームプレイは十分に行なえることを確認した。DirectXTMは使用しないそうなので Macユーザーでも SoftWindowsTMを使って動作させることができるのではないかな。私は試してないけど。
 内容的には、第一章は多少かったるいと感じる部分もあったけど、結果的に後方参照するための前振りとして必要な部分であるために、仕方のないことか。
 また、選択肢に於いてプレイヤーが選択したものの、他のキャラクターの都合ならまだしも、プレイヤーキャラクターの意志の都合でそれが異なる側の選択肢と結果的に同じ行動を起こしてしまうことがあり、選択肢の意味をなしていない部分がわずかにあって、ちょっと (?) であった。
 また、補助キャラクターのシナリオが多少偏っている気がするのだけど、主要キャラクターのシナリオにはあまり干渉してこないため、まあ、補助キャラクターのシナリオに分岐してみなければわからないというのもあり、特に問題とはならなかった。
 あと18禁ゲーでありながら、えっちシーンであまりえっちな気分にならなかったのはストーリー重視である証拠で、私はストーリーの方が気になるので問題じゃないけど、期待する人にはあらかじめ知っておいた方がいいかもしれない。
 さらに誤字が少しあるようで、他の人の意見では、盛り上がるシーンで誤字があり雰囲気が阻害されることを問題視していた、ということを挙げておこう。私個人はボイスを頼りにしているため、さすがにボイスの言葉が間違っているということはないので気にならなかったのだけど。

 ここまで褒めるのは、やはりストーリーおよび主要キャラのシナリオがとても良いことがあり、感情移入度の高いボイス、およびその雰囲気をより高いレベルで表現する画面・音声効果との組み合わせで、ゲーム内の世界に引き込まれてしまったからである。
 この完成度の前では、他の欠点など大したこと無いと言い切れる。
 できるだけネタバレせずに褒めるのは難しかったが、このゲームに少しでも興味を持って共感してくれたらと思う。

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alumina from CeraMiX
First release: Thu Dec 6 03:53:06 JST 2001
Last release: Thu Sep 26 20:42:25 JST 2002
Last modified: Tue Jul 2 16:07:12 JST 2019